これまでのプロジェクト
3.低分子量Gタンパク質の局在と形態形成
(木下,米村)
低分子量Gタンパク質(Rho, Rac, Cdc42)がアクチンとミオシンからなる細胞骨格の形成や機能を制御することが細胞生物学レベルでの実験で明らかになってきています。
しかし、細胞や組織内でそれらのタンパク質がどのように分布しているのかは不明でした。そのため細胞内の局所で起こる細胞骨格の再編成が低分子量Gタンパク質の局所的な働きに よるのかどうかは多くの場合わかっていませんでした。
私たちは、信頼性のある局在を示す抗体と固定法とを確立することから始め、細胞、組織内での正確な分布を知ることができる ようになりました。この技術はRhoAの局在を通して細胞質分裂における分裂面の決定の機構を解析する研究にも応用され、また、胚発生中の神経管形成における低分子量Gタンパク質 の局在とその役割の解析という研究に繋がっています。
ミオシンIIはアクチン繊維上を動くモータータンパク質です。筋肉におけるミオシンIIが筋収縮を起こすことは詳細に調べられています。非筋細胞でもさまざまな現象に ミオシン IIが関わることがわかってきていますが、非筋細胞では筋肉と異なりミオシンIIは必要に応じて局所的に重合して繊維を形成したり、脱重合したり、大変ダイナミックな挙動 を示すことが知られています。
このような挙動がどのように制御されているのかについては十分な解析が進んでいません。
また、多細胞生物の基本的な細胞である上皮細胞のお互いの 接着やそれにともなう形態形成にミオシンIIが関与することは信じられていますが、その機構についてはほとんどわかっていません。ミオシンIIは2本の重鎖と4本の軽鎖 (2本の調節軽鎖と2本の必須軽鎖を含む)からなり、調節軽鎖のリン酸化がその重合を促進し、モーター活性を上昇させることが生化学的解析から知られています。
私たちはGFPミオシンIIやその変異体を用いて細胞内のミオシンIIのダイナミクスとリン酸化との関係を解析しています。
また、上皮細胞の細胞接着装置、特にアドヘレンス・ ジャンクション(adherens junction, AJ)の形成において、ミオシンIIによる収縮力が重要な働きをすることを明らかにしました。
そしてさらにミオシンIIの力がどのようにAJの 構成要素の集積に繋がるかを分子レベルで解析することを始めています。