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​3.上皮細胞の極性形成機構

上皮細胞は二次元のシートを作るのが基本です。それが立体的に袋を作ったのが多細胞動物の原型です。このシートの意味は、生体外と区別して生体内という環境を作ることです。

上皮シートの生体内側には基底膜という特殊な細胞外基質(ECM)成分からなる構造が接しています。上皮細胞の基底膜に接する細胞膜をbasal membraneと呼び、その反対側、生体の外に面している 細胞膜はapical membraneと呼びます。隣接する細胞と接している細胞膜はlateral membraneです。Basal membraneとlateral membraneとは性質的にほとんど同じとも思われ、極性を考える上では basolateral membraneと、しばしば一くくりにされます。栄養等を吸収する上皮細胞はapical membraneには栄養のトランスポーターなどが配置されています。

この場合、Apical membraneは その面積を大きくするために微絨毛のようなアクチン繊維の束を軸とした特殊な細胞骨格に裏打ちされた形状を取っています。取り込まれた栄養は逆戻りせず、basal membraneから放出されます。

 

また、lateral membraneのapicalよりにはAJとさらにapicalよりに近接してtight junction (TJ)があります。特にTJは細胞間の分子の移動(漏れ)を制御する構造です。上皮シートで覆われた 区画の分子組成の違いを保つために分子の通行を厳しく制限する場合もあります。これを上皮シートのバリア機能と言います。

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また、TJはむしろ特定の分子を選択的に通過させるチャンネルの役割 を果たすこともあります。栄養を取り込むために必要なナトリウムイオンが生体外から、生体内に入ってしまうと、細胞はナトリウムポンプを使ってナトリウムをbasolateral側に汲み出します。 そのままではapical側である管腔内のナトリウム濃度が下がり栄養が吸収できなくなるのでTJがナトリウムを選択的に透過させ、管腔側に戻します。

 

このようにapical membraneとbasolateral membrane とは分子組成も構造も機能も異なり、また細胞質でも輸送の方向性や細胞骨格の分布など分子、構造レベルの偏りがあります。これを上皮極性といいます。TJとAJとはちょうど apical membraneとbasolateral membraneとの境界に形成され、TJの機能を考えても上皮極性と密接な関係があると考えられてきています。上皮極性は上に述べたように多細胞動物の体を作る上で 本質的に大切なものであり、その破綻は上皮シートの機能の破綻につながり、細胞の分化やがん化とも関係しています。

そのため上皮極性を作り、維持する機構は長い間注目を浴び続けています。 関係のある遺伝子も多くわかってきましたが、それら相互の関係やapicalの勢力を広げる因子であるとか、basolateral の勢力を広げる因子であるというような捉えられ方をしていて全体像は つかめていません初めに何を頼りに、何が極性を決めるのか、また、決定した極性に従って実際の分子や構造の偏りをもたらすのはどんな仕組みによるのかなどは、整然と理解されていません。

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